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2008年11月25日

『チベットの般若心経』を読んで

 



 
 この本は中古しかなくなってしまったようだが、中級者以上、すなわち一通りの仏教思想を知っている人にはきわめて有用なお薦め本である。まあ、定価が3200円の本なので、多少の汚れは気にしない人ならお得かもしれない。
 
 内容が豊富で、いつものように引用しながら紹介というわけにはいかない。ほとんど全部を引用したくなるくらい、あそこにもここにもいいことが書いてある。この本は般若心経の解説という形をとりながら、じつはチベット仏教の基本思想が説かれているのである。といってもチベット密教について書かれているわけではなく、むしろ中観思想(空の思想)と唯識思想について書かれているといってよかろう。とくに中観思想についてはほかに概観できる本がないので、その意味で貴重である。また、唯識思想に関しては、成唯識論を読み込んでいる人にとってはこの本の内容と唯識の修道論とがきちんと対応していることがわかるだろう。
 
 この本の特徴としては、注がかなり詳しいことと、とにかく読むのに時間がかかるということが挙げられる。自分でノートをとりながら読むことをお薦めしたい。この本に何が書いてあるのか、要点をまとめるだけでもかなりの勉強になる。
 
 私としては、むしろ唯識の修道論に相当する部分がお薦めである。唯識仏教というとすぐにアーラヤ識論になってしまって、どのように修行が進んでいくかは日本ではあまり紹介されていない。そもそも「煩悩熾盛の凡夫には自力修行はできない」という前提から日本仏教(といっても鎌倉仏教以降)が始まっているので、どんな修行階梯があるのかさえ知らない人がほとんどだろう。私は、このような修行の道筋を敢えて進むべきだとまでは言わないが、せめてそんな道筋があるのだということを知って、どんなことが起こるのだろうと想像していただけると、易行門にある人の仏道修行にも資するのではないかと思う。というのは、ほんとうに修行している人だと、読んでいるだけでそこから仏の境地が予感されるからである。いずれは往生した先で歩む道かもしれないと思うだけで楽しくなって来るのではなかろうか。(ちなみに、往生したらそれで修行が終わるのではなく、そこの最高の環境で本格的修行を始めるのだと考えておくべきである。)
 
 

 
 
 


 
 
 
 
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